中国服コレクションについて

1930年代のものを中心に、
民国期(1911〜1949)の服装を紹介します。
チャイナドレス(中国語で“旗袍”)、上着、スカート、
ズボンから長袍、小物に至るまで、
今に伝わる中国服のデザインは
この時期に確立したと言えるでしょう。

民国期の服装の変遷
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 旗袍が現在のかたちになったのは1920年代になってからで、それまでは満州族が着る長着のことを指しました。
 旗袍といえば色気たっぷりのスリットが特徴ですが、ホントは騎馬民族である満州族が馬に乗りやすくするためにつけたもので、それが今のワンピーススタイルになっても受け継がれているのです。殿方悩殺が目的じゃなかったんですね……。
 辛亥革命(1911年)以前の一般的な服装は、丈の長い上着とスカートもしくはズボンでした。ところが革命後、ちょうど日本の明治維新のような動きが起こり、服装もそれに従って変化します。女性が自由に動けるようにと、満州族の旗袍にアレンジを加え、新しい中国服に生まれ変わったのが、今の旗袍です。
 年代別に並べてみると、次第に洋装に近づいていくのがよくわかります。実物の画像は年代別にジャンル分けして紹介していきますが、あくまで推定年代なので、多少のずれがあるかもしれません。ご了承ください。
清朝末期、故宮の御花園で撮影された清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の夫人たちの写真。左から側室の文繍、正室の婉容、唐石霞。この旗袍が満州族のプロトタイプである。夫人2人の衣装が日本の友禅で仕立てられているのにびっくりの掘り出し物写真。
1910年代
 まだ上着+スカートorズボンというスタイルが主流。辛亥革命後徐々に活動的な服が好まれるようになりますが、上着丈は長く、衿が比較的高いのが特徴です。スカートは巻きスカートが主流で、ウエスト両サイドのループにヒモを通し、ウエストをしばって着られていました。生地は絹サテンが中心ですが、夏には絽や紗も好まれたようです。花ボタン(花釦)に趣向を凝らすのも特徴で、下の写真のようなデコラティブなものも多く見られます。
上海には今でも写真館が多いが、これは老舗である南京路の“王開照相館”(1920年創業)で撮られたもの。
20年代初期ころの撮影
ほかの部分はシンプルでも、肩口のボタンに思いっきり凝る服が多い。中国式のボタンというと片方が玉結びになっていて、それを引っ掛けるかのように思うが、30年代くらいまでは、付けボタン(銅釦)を使う服も多かった。気分によってボタンを取り換えられるのが洒落心。
左の写真が入っていたケースについていたロゴ。電話番号がまだ3ケタなので、それ相応に古いものだと思う。
1920年代〜30年代前半
 旗袍が一般に定着しはじめ、流行の移り変わりが最も激しい時期です。20年代中期はふくらはぎ位の丈ですが、次第に丈が短くなり、20年代後半にはついにひざ丈にまで到達し、スリットがなくなってワンピースと全く同じになります。しかし30年代に入ると突然ロングが流行し、丈はくるぶしが隠れるくらいまでになりました。衿の高さの推移も激しく、20年代に低かったものが、30年代前半になると高くなります。衿にボタンが5個くらいついてやたらと丈が長い旗袍は、いかにも30年代風。衿ボタンをはずして着くずせば“あばずれの証”で、喫煙の流行と一緒に、フラッパーを大量生産した時代でもありました。
寧波の写真館で撮られたもの。お揃いの上下を着て(靴は微妙に違う)写真を撮る関係とは一体?
左の娘の前髪は当時流行した垂絲式である。
1920年代後半ころの撮影
【ボトムス】
巻きスカートスタイルは次第に少なくなり、シルエットはAライン主流になっていった。ウエストのヒモ結び(上)も、両はじをボタンで止めたり、前でかぎホック止めにするスタイル(下)に変化する。とはいえデコラティブなデザインがまだ多く、洋装のスカートとは一線を画している。

【生地】
古典的な中国の織物(右)だけでなく、ウールやベルベットなど、洋装の素材が積極的に用いられはじめる。人絹も使われはじめた。古典的な絹織物の柄がアールデコだったり(左)と、織りに大きな変化が見られるものの、プリント生地はまだ少ない。

【トップス】
上着丈はかなり短くなり、袖口が広がった、七分袖スタイルのものが好まれた。短い丈をより美しく見せるために円形の裾が多い。
1930年代後半〜40年代
 旗袍がすっかり定着し、ツーピーススタイルの中国服が影を潜めます。旗袍は年代を経るごとに短く、普通のワンピースに近くなり、40年代に入ると低い衿が主流になりました。ファスナーが使われるのもこの頃です。ボタンは直釦(何も飾りがないボタン)が主に使われ、ボタンなしでスナップ止めという旗袍も好まれました。生地はほとんど洋装と同じで、プリントのものも多く見られます。夏物にはレースやジョーゼットなども好んで使われ、襟芯にセルロイドを使ったものも見られます。
撮影場所は不明だが、上海で入手。新婚さん?女の着ている旗袍は衿が低くてレース素材、キツ目のパーマで、このころの典型的なファッションだ。男のスーツも時代っぽくていい。
1940年代前半ころの撮影
写真のような透けた素材が好まれたようだ。下にはキャミソールを着用する。この旗袍はシルクだが、ポリエステルやナイロンなど、合繊のレースで仕立てたものも多い。